私は楽しかったし、正直 嬉しかった 生まれて初めて親以外の誰かとこうやって コーヒーなんかを飲みながら話したりしている事が それに何より 沙耶が好きになった人の事を話したのが他の娘じゃなくて私を選んでくれた事 メニューの端からチラッと見ると 沙耶が頬杖ついて外を見ていた “今日は来いへんのかな?” 少し悲しげな顔をする “なぁ八重?…アンタは、好きな人おらへんの?” …好きな人…か。 …多田慎二… 頭によぎったのは その名前だった