煙草の臭いと それを消そうとする消臭剤の香りの漂う ホテルの一室
私達は何度 ここで身体を重ねた事だろう
伏せた姿で煙草を吸うシンの身体に身を寄せて 《幸せ》というものを噛み締めていた
シンは深く息を吸い込み 私に自分のありのままの生い立ちを語り出した
シンは幼い頃両親を失い 親戚中たらい回しにされて 施設へと入る
その施設で16才まで過ごすが そこで出会ったのがあの老人ホームの施設長だった
施設長は小さな頃から自分の生きる術を知っていて 大人に媚びる技を知っていたという
誰ひとりに媚びる事をしなかったシンと施設長は 互いに反発仕合ながらも 親友へとなっていく
そして 施設長は15才の時に里親に引き取られる
《なんで、15才という年になって養子になったの?》
《それも、アイツの生きる術だよ。金がなきゃ生きていけないのは分かってた。里親になるっていったアイツの親父は、かなりの金持ちだったのさ。》
《そうなの?》
《ああ。アイツは、いつも先を見越してやがる。くやしいけど、アイツには感謝してるよ》
《えっ?どうして、施設長が養子になったのにシンが感謝するの?》
《アイツは、な…》
施設長は養子になる時、シンも養子にしてくれ。と、頼んだらしい
だけど シンの性格上、養子になる事は嫌だ。と、断固反対して
施設長のお父さんは シンを養子にせず、生活の面倒だけしたらしい
シンは 施設長にも、施設長のお父さんにも頭が上がらないみたい
その話しをしているシンの横顔は とても穏やかで優しかった



