「7歳から8歳……今から約10年前か……。あぁ……そういう事か……」
「ん?どうしたんだ?嬰治?」
「いや!何でもないよ……」
嬰治は涼輔の背中を出口の方へと軽く押した。涼輔は嬰治の方を振り返った。
「嬰治……?」
「涼輔。先に帰りな」
「嬰治は!?」
「まだ俺は仕事があるからさ。俺の仲間がお前を無事に行けるようにする。だから早くここから出た方がいい。俺なら大丈夫だから」
嬰治は涼輔にそう言うとあの時と同じように氷で出来た剣を再び自分の右手に出現させると、涼輔の鎖を切った。そして切り終えると部屋を出て行こうとした。
「――涼輔」
名前を呼ばれた涼輔は再び嬰治を見た。すると嬰治は涼輔の方に振り返り言った。
「――俺の正体が涼輔にバレちまったし、恐いもん見せちまったかも知れない。……ごめんな……。さすがにこんなん見て友達続けてくれるわけないだろうから、言っとくな。短い間だったけど楽しかった。ありがとう……」
嬰治はそう言うと出て行った。その時の表情はどこか悲しそうだった。
