僕はその手をそっと握ることしかできなかった

最後は下段から切り上げ、副部長を床に沈めた。

防具をつけていない。状態で戦ったんだ。

痛みは相当なものなはずだ、副部長は方で呼吸を続けていた。

「何回、やったって同じだよ。沢田くん弱いもん」

「んだと、もう一回言ってみろ」

「だから、弱いって言ってんだよ」

二人は声を荒げて睨み合う。

副部長にとったら思いもしない言葉だったに違いない。

空撫さんに勝てはしくても対等だと思っていたはずだから。

「マジになったら、誰も私に敵うわけない」

空撫さんは竹刀を納めて、衝撃的なことを口にした。

「どういうことだ」

「だから、部活でも試合でも本気出したことない。本気出さなくても勝てるから」

クスクスと笑っているけど、その笑顔は泣いているように見えた。

「今まで、手を抜いてたってことかよ!」

副部長の言葉に空撫さんは頷いた。

それは、彼にとって最大の屈辱になったはずだ。

「舐めた真似しやがって!ずっと、んなことしやがってたのか」

副部長は竹刀を置いて、空撫さんの肩を掴んで、前後に揺さぶった。

「オレだけじゃねぇ!男子部女子部、全員の気持ちを踏みにじってたってことだぞ」