それから幾日かたったある夜、休んでいるルイの部屋の外で大きな音がしてドアがしずかに開いた。

ドアの外には見張りの警官が倒れていて、そこをすっとケビンが部屋に入ってきた。

足はまだ引きずっているようだが、経過はよさそうだった。

ルイは何から話していいのかわからなかった。

できれば抱きしめていつものように髪をなでてもらいたかった。

そしてその少しの沈黙をケビンが静かに破った。

「さくら、会いたかった…。」

その甘い顔とはアンバランスな低い声が、さくらの延髄を刺激する。

それはずっと聞きたかった、聞きなれた声だった。

「ずっとそばにいてやれなくてごめんね。僕にも時間が必要だった。僕は撮影の合間にある人物からの電話を取った。その人はバリーが殺されたことを告げると、僕に麻薬をみつけて君を殺せば、僕の弟の命を助けるばかりでなく、バリーの代わりに孤児院に引き続き金を送ってやると言われた。そしてその直ぐ後、携帯の写真で、弟と小さな女の子が写った写真が送られてきた。」

外が急に騒がしくなり、新たな救急車がエマージェンシー エントランスの前に止まった。
また誰かが、苦しんでいる。

「僕は見たことも無いその人物の話を、信じるしかなかった。でも僕にはどうすることもできない。僕に君を殺せるはずも無いし、君が思い出してくれなければ麻薬も見つかるはずが無い。」