五日後の朝。

この日、メイソン警部はルイをニューヨークの総合病院へ搬送することを伝えた。

ルイは何度もケビンのことを聞いたが、まだ見つかってないと言う。

ケビンが行方不明だということは外にはふせられている。

そして中断されている映画撮影に関しては、半年間の先延ばしが決定された。

それと言うのも、ケビンが撃たれたときの演技が大きな反響を呼んだのと、その時に本当に実弾で撃たれたという事実が、ハリウッドにちょっとしたセンセーションを巻き起こしたため、撮影は続行されることとなった。

もちろん、ケビンが撃たれたあのシーンも使われることになっている。

実際には、誰にもケビンの居場所さえわからなかったのだが…。

そしてルイがニューヨークの病院へ移って二週間後、前にもまして早くルイは回復して言った。

相変わらず病室のドアの外には一人護衛の警官が常時ついていたが、サン.サルバドル島での悲劇も少しずつ色あせて、ルイも落ち着きを取り戻して言った。

何度も何度も死にたい、亮介のところへいきたいと思ったが、生きていかなければならぬ。
あきらめずに生き抜かなければならないのである。

そこに大した理由は全く無い。

でも自分の人生を全うせねばならないという、ルイの野生的な試みはこれからも続く。

死にたくて死ぬ野生の動物はいないのだ。

そしてただ彼女は生き抜くことをやめないのである。