意識がはっきりしたところで、メイソン刑事が病室に入ってきた。

「ルイ、どうだい調子は。」

まだ彼を信用できないルイは『ルイ』という名前に反応せず、何も思い出せていないように振舞った。

「バリー‐コステロが死んだよ。仲間にやられたんだ。」

表情から心を読み取ることが得意であろう、こういった人種には目を見られないようにすることが一番だ、と、ルイは瞳を閉じた。

「ケビン‐キーマン氏が行方不明だ。左足の手術が終わり、麻酔が覚めないと思われていた時間帯に消えたんだ。」

思わずルイは目を見開いた。

そして点滴が刺さっていることなど忘れて、ベッドから起上がろうとしたが、あまりの激痛が彼女の左肩を襲い、ルイはそのまま気を失いかけた。

あわててメイソン刑事が彼女を抱きかかえそっとベッドに戻した。

「今は信じてもらえないだろうが、僕はバリーのシンジゲートへ潜入操作を行っていたんだよ。だからバハマ初日のあの晩、君の姿をあの部屋で見たんだ。でも僕はそれを君に告げることができなかった。捜査は秘密に行われていたから。すまなかった。」

ルイは痛みに汗がにじみ出るのを感じながら注意深くメイソン刑事の話を聞いた。

「あの日君のご主人が殺され、セキュリティーカメラを検証した管轄から僕に連絡が入った。どうやらその殺した連中がバリーの仲間らしいと。そして僕は君と会うこととなったんだ。しかし、どうやら話はそれだけではなかった。」

ドアの外では数人の警察官がの気配がした。

「君を病院に運んだキーマン氏は、バリーと昔からつながりがあったんだよ。」

今この刑事が話していることは、すでにルイにはわかっていたことだった。
ルイは自分の感の良さを心から憎んだ。

それはルイが想像した最悪の事態が全て本当だったから。

そしてそれを認めないでいようという気力さえ、生まれてこなかったから。

すでにルイは自分の感情を抑えるぎりぎりのところまで来ていた。

今すぐケビンが亮介の死に関係しているのかどうか、どうしても知りたかったが、もしそれを話してしまえば自分の記憶が戻ったことをメイソン刑事に証明してしまうことになる。