その瞬間、呼び鈴のチャイムが部屋中を鳴り響いた。

誰かがこの家を訪ねてきたのだ。

丸坊主の男が、満面の作り笑顔でドアを開けた。

そこにはまだ年若い神父と幼い女の子が立っていた。

「コステロさんはおられますか?」

「あぁ、彼は少し出かけてるよ。」

「私たち、セント‐ニコラス孤児院からきたものです。いつもコステロさんが寄付してくださっているので助かっております。」

小さな女の子が、大切に両手で握っていた飴玉をむいて食べようとしている。

「今回は今年のクリスマスのパーティについてお話させていただこうかと参りました。」

「あぁ、いつ帰ってくるか俺にもわかんねんだよ。」

丸坊主の男がニューヨーク出身でもないのに、ニューヨーカーのアクセントを真似ていった。

ビリー ジョエルのように、『R』のサウンドがきつい。

そしてその瞬間、女の子の手をすり抜けて黄色い飴玉がコンクリートの上を転がった。

丸坊主の男はためらいもせずにそれを拾ってやると、キッチンへ行って水道で軽く洗ってやり、女の子の手に戻してやった。

今にも泣きそうだった女の子は、かわいらしい笑みを取り戻し、小さな声で「ありがとう。」といった。

「ご親切に。では、コステロさんが戻られましたら、キーマン神父が尋ねてきたとお伝え願えませんか。よろしくお願いします。」

「はいはい。」

男は面倒くさそうにうなずくとドアを無愛想に閉めた。

そして中ではサザナーズアクセントの男がまたなにか電話で話していた。

その頃、ニュージャージーから遠く離れた島国、震える手で携帯をじっと見つめる人物がいた。

そしておもむろにその携帯をテトラポットのコンクリートに投げつけると、そのまま人知れず立ち去っていった。

遠くには撮影現場の活気ある風景があった。