「そいつは面倒だな。やつらに先をこされては面倒だ。何かこちらが知れてしまう情報が一緒に入っている可能性がある。」

「はい。」

とどのつまり、バリーたちにとっても八方ふさがりだ。

今さらのように軽率にヤンを殺したことを悔やみきれない。

手がかりが何一つ無い。

「他に情報を持っていそうなやつはいないのか。」

「英語もわからなかったんで、可能性は薄いですが、サンプルを持っていた日本人が一人います。」

「始末したんじゃなかったのか?」

「はい、二人ともイーストリバーに沈めたんですが、今朝のニュースでは男性の遺体しか上がってないようなことを言ってるんで。」

この足の悪い男、準備周到な切れ者である。

「女がまだ生きているのかと。」

「死体が流れてまだ見つかってないだけじゃないのか?」

「わたしゃ、死んだ男の体とその女の体の両方をお互いしっかりとくくりつけて、重石を使って沈めたんで、それはまずないかと。だいたいその紐、生きてる人間がもがいたとしても、到底外れるようにはくくらなかったったんで。だから死体が見つかってなければ、運よく助かったのかと。」

「相変わらずお前はひどいことをするなぁ。」

バリーがつぶやいた。