「たかが三流麻薬、されど麻薬か。ないよりはましだな。商品をみつけだし、品質の悪さをはっきりさせてから、『イーストコーストのシンジゲートに商品の粗悪ぶりの情報を流す』と、タイにブラックメールを送ってみるか。そうすりゃ、良くていつもよりも質のいいのが届くか、悪くても前払い金は返ってくる。やつらもまだまだ商売したいだろうからな。何とかくすりの場所を探し出せ。ものがちゃんとあれば、他のシンジゲートにも話がついてタイのマーケットに報復できるからな。」

「しかし、タイのシンジゲートがヤンの入国前に送っているはずの品物のありかは、残りの金額が渡ってからヤンが直接知らせるというものだったので。難しいでしょうな。」

一番小ズル賢そうな足の悪い男がいった。

「注文したのが一ヶ月前だ。少なくとも商品はヤンが入国する二日前までには港についているはずだ。その間にあったタイからの船を徹底的に洗えっ!」

ネガティブな答えに、バリーが声を荒げた。

「はい、もうすでにやりましたが、タイ経由の怪しいコンテナ.タンカーが二隻ありました。一隻はエジプトから、そしてもう一隻はイギリスからでした。どちらも東京で停泊してました。しかし、まだ積荷はそのままで、その中のどのコンテナに商品がかくれているのか、検討もつきません。」

足の悪い男がバリーの大声に眉ひとつ動かさずに答える。

「それに、一隻のタンカーに積んであるコンテナの数は80個前後、合計169個。ロゴやID番号、それに会社名しか書いてないコンテナ一個一個を開けてスーツケース二つ分の『もの』を探して廻るわけにはいきません。」

「では、引き取り手のいないコンテナはどうなるんだ。」

「一応一年間倉庫で保管できるように、ヤンと船舶業者で契約が交わされているそうです。しかし、その後コーストガードに届けられます。まぁ、その前にヤンの一味が片付けるでしょうが…。」