今日は入学式。


まっさらな制服に袖を通し、鏡の前に立つ。

ここのブレザーは何と言ってもかわいい。赤いチェックのスカートと、大きな赤いリボン。アニメに出てきそうな制服だ。


よし、と小さく呟いて、部屋のドアを開けると、丁度涼輔さんと洋輔さんが廊下に出てきたところだった。


洋輔さんはいつも通り(ここに来てからまともな会話を一度もしていない)、私を無視して階段を降りて行く。
――やな奴、と心の中で悪態をつく。顔はいいってのに、宝の持ち腐れもいいとこだ。



「おはよう。制服、よく似合うね。」


にっこりと話しかけてくれるのはもちろん涼輔さんだ。


「おはようございます。」

照れながら挨拶を返した。


リビングに入ると、先にトーストをかじっていた光輔くんが、ぱあっと笑顔になり、私に駆け寄ってくる。


「モーニン、リン♪とってもかわいいね!」



ひとつ下とは思えないほど、かわいい。背は私より小さくて、美形の顔は女の子みたいだ。


「おはよう、ありがとう♪」


彼とは唯一、緊張しないで話せる。

荷ほどきしている私を、一番早く手伝いにきてくれたのも彼だった。



「おはよう、リンちゃん。」


優しい笑顔で宗輔さんが、こんがり焼けたトーストとカリカリのベーコンを添えたスクランブルエッグをテーブルに置いてくれた。



「今日も洗濯ありがとね。大変でしょ、量多いから。」



いえいえ、と答えたが、初めはそりゃあ驚いた。
洗濯物の山、それも全部男物。パンツにびっくりしてる場合でもなかった。


まぁでも慣れればそう大変でもない。掃除も洗濯も、2回で慣れた。



部屋は広いし、ご飯はおいしい。
くどいようだが一人を除けばみんな優しい。


私にとっては、もうここはすでに、居心地のいい場所だった。