鎌倉物語

 


「すいません。後はもう一つだけ意見を述べさせてもらってもいいですか?」

「はい。どうぞ」


「もう一つどうしても気になったのがありまして」

「手を止めて見ていた鎌倉海岸の絵ですね」

隣の画家が得意げに皆へ言った。

「はい。私は永里結子さん作の『鎌倉海岸』を推したいと思います」

「若さが溢れていて、活気があるという点では、大賞作に引けをとってはいませんな」

隣の画家が嬉しそうに説明する。

私は、つまらないな、と思いながら、自分の考えを述べた。

「何よりこの作品だけ、他の300数作品とは決定的に違う部分があると思うんです」

周りが私に注意を向けたのが分かった。その反応に頷いて応えた後、私は続けた。

「多分この作品だけ、本人が実際に行ったことの無い場所を描いてますよ。」