鎌倉物語

 

 会議は進んだ。各審査員の目が肥えているのか、受賞作の見極めは早く、大賞作品には私の意見を残して全会一致で一つの作品が挙げられ、ほとんどの賞も全てが決まりかけていた。

私の意見が最後なのは素人だからだろう。「各先生方と同じで私も」と、選考を容易に、またそれを発言させ易くする為だと思った。そして私もその通りに動いた。

「四宮さんはどうですか」

「僭越ながら私も各先生方と同じ意見です。大賞作品は素人目にも十分に魅力的に映る作品でした。横浜の港が、これほどにも活気強く描かれていて、見ていると元気が湧き出てきそうです。まさに神奈川の風景として象徴的な一作ですよ。大賞に推したいと思います」

「それでは決まりですね。大賞作品は『横浜の港』に致しましょう」

こうして無事に全ての作品が決まったが、私はこの会議が終わりかけたそのときに、急に自分の発言へのある種のもの足りなさや、技巧優位だった審査へ、己が身も素人としての抵抗感、が芽生え、作家として、あるいは批評家として、自分の存在を示しておきたいが為にある事を述べた。