よくよく考えてみれば、得意と言えるような事は特に思い浮かばず、初香の手は完全に止まってしまった。


得意な事がないなんて、ちょっとヤバくない!?



「コレッてものがないなら、それこそ泡立てくらい上手くやらなきゃ、瀬田君離れちゃうよ?」

からかうような百合の発言は、初香の乙女心にグサリと突き刺さる。

「もう、いじめすぎだよ?」

トコちゃんは初香からボウルを奪い、氷水が入った一回り大きいボウルに重ねると、慣れた手つきで泡立て始めた。


けれど、百合の言っていることは最もで、初香を不安にさせる事そのものなのだ。

学校のアイドル的存在でもある壱哉が、どうしてこんな平凡な自分と付き合おうと思ったのか、不思議で堪らなかった。


だから壱哉が告白したときも、初香はただ呆然とするしかなかった。

初香もひそかに想いを寄せていたが、叶うはずないからと打ち明けられずにいた。

だが、それが実は壱哉も好きだったというのだから、驚きもひとしおだ。