羨ましそうに見つめるボウルからは、真っ白で綺麗なホイップがモコモコ溢れ反る。

「初ちゃんには初ちゃんの得意な事あるでしょ?それでいいじゃない」

初香の気持ちを察したのか、トコちゃんが優しい言葉を投げ掛けた。

「初香の得意なものって?」

いきなり背後から声がし、慌てて振り返ると、初香の後を引き継いだ百合が泡立て器をシャカシャカしていた。

「はい交代っ!」

銀色のボウルを初香に押し付け、かい怠くなった腕を解す。

「百合ってば、そんな意地悪言っちゃって・・・」

「じゃあトコちゃん、初香の得意分野に心当たりある?」

「えっ?そう・・・だなぁ・・・」

そう言って悩む仕草をするトコちゃんに、少々傷付いたりする。

「あるよっ、あるもんっ、私だって得意な事っ!」
意地が混ざった腕をグリングリン回しながら、初香は鼻の穴を膨らませて断言した。

「ビックリ。初香の得意な事って何?」

どう見てもビックリしていない百合が冷静な顔で尋ねると、初香の手が速度を落とす。



得意な事・・・かぁ。