・・ん?


「ほら・・
よいしょっと・・立てる?」


その状態のシアを立たせようと
してる男は歌手や
俳優でもある三木快人である。

俗名"王子"・・だそうだ。
隣のスタジオで収録なんだろう。


「ありがと、久しぶりだね。」


俺は上から横取りするかに
彼女を跨ぎ、
脇を引き上げ起こした。


「やあ! ジュード君、
会いたかったよ。」


ヤツの眩い
"キラキラビーム"は無視、

いつも通りポケットに片手を
突っ込んだまま突っ立ってる
シアの鼻先を指で摩ってた。


「ムケちゃってんじゃん・・」

「すみません、足が・・」



シアの足首がまだ震えている。
緊張が解けず、
体も固まってしまっていた。

時間も押してて直ぐ移動だと
云うのに仕方ない。

ワンピースだし有無言わせず
横抱きしたんだ。


「いや、いいです!!」

「その千鳥足に付き合ってる
時間もないんだって・・。」



軽いし、なんて事はない。

これからラジオ局へ向わねば
ならないから。

その歩きで顔にまた
怪我でもされたら困るんだ。

俺がシャカシャカ歩いた方が
早いしね。



「世話の焼ける付き人だね、
ホントに。いないよ?
俺にこんな事させた人間は。」

「申し訳ないです・・。」



しかし、この男の前で
お姫様抱っこはマズかったか。

そうじゃなくても俺を
"王子化"したがってんだ、
この男は。



「ゥワォ、王子道まっしぐら?
イイねー。ジュード君、
目立ってるヨ。」

「悪いね。何しても
目立っちゃう宿命なんだ。
じゃあ、王子。
俺はまだ先を急ぐから。」


ヌケヌケとそう云うと
ニヤニヤと何だか嬉しそうに。


「後でどう? 」

「OK」



そして、冷ややかに
その様子を見てた後ろの女。

誰かと思った・・。

俺は思わず天井を仰ぐ。
カイト王子と一緒に
出番待ちらしい。


「優しいやん・・?」


俺の腕に乗るシアと
去年、俺と別れた女は
しっかりとすれ違い、
目を合わせた様だった・・。