「・・・・・・。」


パッとカメラが切り替わった。
黙ったまま、
ゆっくりお辞儀をする
シアの全体が写されていく。

今までとは違う、比較的
シンプルなデザインを選んだ。

黒のレースと二重になって
いて、関西風に云うなら、
ちょっとした
"よそ行き"になったりする。



「あー、いいですね。まさに
"掃き溜めに鶴"と云った
感じではないでしょうか?」

「オイオイッ、
ちょっと待ったり!」



ほっこりした
毒のない言い様に空かさず
レギュラーの女達から
講義の突っ込みが入った。

・・・・マイク、必要か?

酷い話だ。
関西出身の元・アイドルも
その中にいると云うのに。


「!」


中には
不埒なお笑い芸人もいた。

シアの手を取って何処かへ?
連れて行こうとする
バカがいたんだ。

しかし司会者が
その小汚い手を叩き落とし、
未然に防いでた。



「はいはい、触らンといて
下さいよ。モデルさんが
汚れてしまいますのでねー。」


サングラスの奥から睨みを
効かす俺。
当然、パフォーマンス
みたいなノリで。


「・・・・・・・。」


スーツ姿でポケットに片手を
突っ込み、ソイツの目の前に
距離を縮める。

もう片方の拳を握り締め、
ピンマイクの位置で
バキバキッと鳴らせてみせる。

黙ってネクタイに手をやり、
眉間にわざとシワを寄せて
無言で脅せば皆、コソコソ
逃げてオーバーに怖がった
フリをした。



「ジュードさーん?
コレ、限定なんですね?」

「・・・・そう。今だけ。」



俺としては関西での仕事は
やり易い。
適当にいじってくれるだろ?

彼女にイタっては困るんだが、

・・ん?

マズイ、
シアの目が全開に見開いてる。

あれだけのテンション、
しかも皆、
声が異常にデカイんだ。

緊張がピーク近いらしい。


トイレは
行っておいたよな・・?


よーく見ると、口まで
むずむずと一文字に
変化しようとして動いてる。

早めに引き上げたいもんだ。