今回は・・、
俺の仕事を
手伝ったまでのこと。

契約期間中だから
仕方なく従っただけだ。



「付き人以外
するのだって、あっ?」

「シアっ・・! 待て、」

「いやっ!」



掴んだ俺の手を振り払い、
飛び出して行ってしまった。



「急過ぎたんじゃないですか」



あまりに彼女の気持ちを
無視しすぎだろう。

舌打ちしたい気分で
社長を一瞥し、
俺は心当たりに車を向かわせた。







「・・・。」


所詮・・
女と云ってもまだ子供だ。

まして、彼女の事だ。
考えなくとも行き先は解ってた。


俺が二度と来たくないと思った、
彼のマンション。


シアは・・暗い中、
住人の居ないドアの前で
蹲っていた。



「・・ヤツは引っ越したんだ、
事務所からその費用が出てる。」


「だったら・・
私との契約も無効ですよ。」

「ちゃっかりヤツに一筆書か
せてる。残念ながら有効だ。」


「なら、後一週間ですね。
それ以上の義理はないです。」



彼女の隣に、
同じ様に腰を降ろす。

シアはずっと膝を抱えた
腕の中に顔を埋めたままだ。


後一週間・・、
ずっと指折り数えてたんだ。

"捨てられた"
そう思うのも無理はない。

社長のやり方が
マズかったにせよ、これで
良かったのかもしれない。


奴はお前が思っている様な
男じゃない。



「いつまで
ヤツに依存してるつもり?」


「・・・。」


「本当にお前が大事だったら、
貸し出しなんてしない。
その程度だったんだよ。」



とうとう・・
泣き出したらしい。

声を殺して
肩だけ揺れているのが
暗がりでとても切なく見えた。

耐え切れなくなった俺が
その細い肩を
抱き寄せようとする。

彼女は
抗う事もなくされるがままだ。


「シア・・?
何も永遠の別れじゃないだろ?
俺達と仕事してれば
彼と会えるんだし。」


気休めにもならないだろう。

"何も知らないクセに"


そう
罵られたら俺は何も言えない。