「シア、お風呂空いたよ。」

「ええ。じゃ、これ・・。」



奴にうどんのおかわりを
出して頷いてる。

居候め、
シアに手料理を作らせるとは。

水を取って来てから
何気に奴の向かいに座った。

出て行く彼女に頭なんか
軽く下げてる。



「いや~、いいコっスね!?
・・あーっ!」


「なかなか美味いじゃない」



ヨソ見してるからだ。

どんぶりを奪って
ズルルっと一口だけ
味見してやった。

関西風だな・・うん、
ダシが美味だ。
冷凍のうどんで食べるのが
勿体無い。



「ああ~っ! ダシが減るー!」

「煩い。」

「ちょっとォ!
飲みすぎですよ!」

「・・げぷっ。ごちそう様。」



なぁに、軽いイジメだ。
見た目、
色の着いた"うどんだけ"に
なっちまった。


「・・・半分も飲みますか?
フツー。」


鉢を押し返してやると
口を尖らせたまま
受け取ってまた食べ始めた。



「彼女、訳アリっスか?」

「えっ・・? 何で?」



那須は箸を止めて
回りを見渡した。

そしてニュッと
顔を近づけて小声で話す。

ごく普通の
初対面にありがちな会話を
彼女としたらしいが・・。


「実家は近いの?って
聞いたら、"もう無いんです"
って云うし・・。」

「ない・・?」


"火事で・・
今はもう更地になってます"


初めて聞いた、
シアの実家の事なんて。
それ以上の事は
さすがに聞けなかったそうだ。

もしや・・それで誰か
亡くなったのだろうか?


「確かに謎は多いよ。けど
訊ねたところで教えて
くれそうにない。」


「いるんスよね! 
聞かれないから云わなかって云う、
タイプの人間が。」


「・・お前以外、
皆そうじゃない?
って、俺は思うんだけど。」



呆れた顔で
ペットの水を飲んでる俺に
そう云われ
口を歪めて顔を顰めた那須。

俺もどちらかといえば
そういうタイプだ。
そして、深くは聞かない。



解ってる、
だからダメなんだ・・。