「社長が事務所に来いって。」
マネージャーは会社の人間だ。
ほんの僅かの隙に
さっきの事も含め、
とうとう報告しやがったか。
隣のシアは不安気にも見える。
嫌な予感は同じだったらしい。
「ジュード君いらっしゃい♪」
事務所に来るのも久々だ。
受付のおばさんは
変わらずまだ居たのか。
とうとう
ビルごと買い取ったらしい。
結構、潤ってるんだな。
社長室へ通されると
ニッコニコの社長。
空かさず
シアに大接近してきた。
「へー。
新しい付き人ちゃん?
かわいーじゃなーい。
何処で見っけたの?」
・・やっぱり。
彼女はカサコソ、
俺の後ろに隠れちまった。
そりゃ、こんなヤクザ顔の
オネエ言葉な
オッサンだもの。怖いわな。
「・・・初めまして。」
「こんにちわ。
お嬢ちゃん、お名前は?」
アンタな・・。
怪しい、怪しすぎるぞ。
だいたい白々しい。
マネージャーから
聞いている筈だ。
「社長、すみませんね。
このコ、対人恐怖症なんで
その・・ド・アップは
止めて貰えます?」
「あ・・そう? 近づき過ぎ?」
・・・誰でもオビえる。
簡潔に彼女の紹介をした。
そして一旦席を外させる。
「コラボ服のモデルの件は?」
「カメラ・テストだけですよ。
向こうが使うかどうか・・。」
彼が何故呼んだかくらい
解っている。
社長を信用している
訳じゃないが隠すのもマズイ。
坂巻との話も一応しておいた。
そして、
釘も打っておくのも忘れない。
「これは
俺、個人の問題なので」
そう、
話せと云われたから
話しただけだ。
事務所にさえ
彼女を引き渡すつもりはない。
彼はシアを
商品にするつもりなんだろう。
・・・お断りだ。


