「このイメージを壊せたら
いいんですがね。」


スタッフは他の物も同じ
イメージで捕らわれる事を
嫌がった。


「例えば・・
ボンヤリとしたものでも?」


売れない物は
提案できないので、
俺は逆に
スタッフ達に尋ねたんだ。

まさか質問を
質問で返されるとは。



「さっきの彼女・・」

「付き人?」

「ええ、
身長どの位かなと思って。」



背は今時のコにしちゃ
確かに低い。
俺はマネージャーに目を向けた。



「確か
154か5って聞いたかな・・。」

「大っきなサバだな、
150あると思ってたの?」


余程、ちっちゃいのを
気にしてるらしい。

局にある巨大自動販売機が
シアの天敵だった。

周りの人間の背が高すぎる
ってのもあったけど、
小顔なので余計小さく見える。



「Sサイズな女の子にも
似合う感じ?」

「そうそう、小さな女の子が
ちょっと背伸びしたような
そんな雰囲気で。」



次々と彼らが模索する
イメージを口に出して行く。

ふと、俺は坂巻の所で見た
最初の彼女のワンピースを
思い出したのだ。



「クラシカルで・・
ありそうでない、シンプルな
感じ。そう、こんな・・。」



絵が苦手じゃない俺は
スケッチブックと
鉛筆を借りて、
そのイメージを描きだした。

こう見えても
美術はいつも5だったんだ。


不思議なもので、
シアの雰囲気にぴったりな
ものを考えると
次々とラフなデザイン画が
出来上がった。

説明書きも
ちゃんと入れて渡すと
感嘆の声が彼らからあがる。

まあ、ざっとこんなもんだ。

売れる売れないは別にして
なかなか
良い出来なんじゃない?

アトは君達の腕と売り方次第、
せいぜい
良いイメージを作って・・



「・・彼女、
使わせて貰えません?」

「は・・・!?」



自分の描いたラフ画を
良く見ると・・
無意識に顔までご丁寧に
ハッキリとシア似である。



・・・恋煩いでもあるまいに。

マネージャーの視線が痛い。