本日、最終の予定。

マネージャーの運転で
某・大手アパレル・メーカー
にやってきていた。

凄い出迎えの数だ。

ただし色気はない。
全員が
スーツ姿のお偉い方々か。

さすがに社員教育が
できている。
不細工な野次馬は一切いない。

たまにすれ違う者も深々と
頭を下げて通り過ぎるだけだ。



「ではこれで。」



俺の後ろで緊張気味だった
シアがそう云い、
会議室のドア手前で
下がって行った。

中へは俺とマネージャー、
座っていた
六人のスタッフが立って
挨拶と紹介をしていった。

ドア越しに
シアを見てた者が訊ねる。



「彼女は予定(デビュー)が?」

「まさか。彼女はただの
僕の付き人ですよ。」

「ああ・・。」



この会社の
ゴシック・ロリータの部門は今、
俺の様なヴィジュアル系との
コラボ・シリーズに
力を入れている。

プロデュースなんて
面倒なコト、
断ろうと思ってたが

どう云う訳か事務所が
受けちまってた。

利益的な
計算があっての事だろう。

今まで、
誰のシリーズが
一番人気があったのか?

俺としては気になるし、
また引き受けたからには
それを上回らなきゃ
気がすまないのだ。


「ネーム・バリューだけって
のもね?」


一番人気のパンフを見ながら
云ったので
イヤミに聞こえたかも知れない。

そこに座っていた
スタッフが苦笑いした。

どうやら"奇抜すぎる"
デザインだと思ったのは
俺だけではないようだ。

個性的な
外人モデル達が着れば
何だって
カッコ良く見えたんだろう。


「体型にちょっとでも
コンプレックスのあるコは
欲しくても絶対買わないな。」


着る人を選ぶ服って
感じがなけりゃ
もっと売れんたんじゃない?

素直にそう思えたんだ。

ターゲットは
二十歳以下の日本人なんだし。

コレを作らせた
某バンドの美形ベーシストは
薄々知ってはいたが・・
頭が悪いかも。