陽も暮れ、外に
待たせてある車が気になった。

本当は少ししたら
腰を上げる心算だったから。


「・・彼女、まだ若いよね?」


どーやって
退散の切っ掛けを作ろうかと
思案しながら、
悟らせまいと話を続けた。


「確かもうすぐ19って。」



( 歳を誤魔化している? )



落ち着いて見えるが、
肌の透明度は
スッピンだと誤魔化せない。

履歴書ぐらいは
書かせているだろうが、
あまり興味がなさ気だった。


気が付くと奴はニヤリと笑い、
俺の顔を伺ってた。

この男も
人を観察するのが好きらしい。
ただし、妄想しない程度に。



「・・サクのヤツも凄く
気に入ってるみたいなんだ。」


「へえ・・サクヤ君が?」



意外な人物の名が飛び出した。

この男とは全く正反対な性質の
シャイな天才ギタリストの話だ。

彼とサクヤが同じバンドの
現役時代、2人がてっきり
"ゲイ"だと思ってたんだが、
実際ともにノーマルだったのか。

良くある"こう云う方向"で
売って行こうってヤツだったのかな。

今は
仲が悪いって噂だったけど?

同じレギュラー番組で彼に、
前のバンドの話をフルなって
云われてた位だ。



柔軟な彼と違い、
この坂巻のスタイルは頑なな、

80年代のアーティストらしい
変わらない
スタイルを保ってる。

当時もあれだけあった音楽
番組の出演は殆どなかった筈。


( そんな彼がなぜ? )