ハリウッドの撮影現場にて・・


『あー、シィの足、もう一段
"セッシュー"※しようか。』


わ、そんな言葉まだ使う?

さすがは"日本ダイスキ!"な、
コルドマン監督である。

ジュードさんと向かい合った
私の足元に台が
また重ねられていく。

仕方ない、彼の身長は
予定外だったから・・・。

なにせ今回の私の登場シーン、
キスシーンが多い。

次は、お屋敷のゴージャスな
バスルームのセットにて。

吸血鬼カップルのアワアワ
バスバブルの入浴シーン。

バスタブの中、彼は後ろ、
私は彼にもたれている。

(用はいつもみたいな感じ)

顔を覗かせた彼がキスをする。
今は・・ただそれだけの演技。


あれからこんな展開になる
なんて・・誰が想像しただろう?


『こらぁっ! ジュード!
ヤル気アリすぎだ!
そこは軽く"チュッ"でいい!』


半ば呆れた様な、
笑いたい様な
コルドマンの声が飛んでくる。



同じセット内で撮る予定の
共演者達は既に特殊メイク姿で
揃って私達のそのシーンに
口を歪めて肩を竦め合ってる。



『・・マリブの新居に
帰ってからやってくんないか?』

『・・早いトコOK貰っちまえ!』


『『『 そーだ、そーだ! 』』』



初日からこんな野次で
現場は大笑い。



ジュードさん・・

もうこのシーンだけで
"テイク23"なんですケド・・。

彼は真面目顔で
指を一本立てて頷いてる。


『・・・もっ回。』


次キメテくれないと
もう、唇が持ちません・・。






+ end +






※日本人初のハリウッド・
スター、早川雪洲から来た
足元を高くして共演者との
身長差を縮める事。
今は殆ど使わない業界用語。