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「催眠療法の悪用、
確認しました・・。」

ウォークイン・クローゼット
から専務がレコーダーを手に
その姿を現した。

俺はキッチンカウンターの
収納庫から飛び出し
カウンターを飛び越えた。


「!!」

「ウッ!」


我慢ならなかった、

気が着いたら胸倉を掴んで
奴の顔を思い切り殴っていた。


「ジュードさんッ、
駄目だ、いけないっ!」


専務が止めたのは、
顔を殴る行為に対してだ。

証拠が残り過ぎるし
ビジュアル系は顔が命。

奴はカウンターから
起き上がると
口の中の血をプッと吐く。


彼女はコート掛けの根元で
青い顔をして蹲ってる。

抱きかかえ、顔を覗き込むと
俺に無理に笑って見せた。


「大丈夫か」


保護したシアを腕に庇い、
俺は真っ直ぐに禅を見据えた。


ハゲ頭は顔色を失い、
俺を睨みつけてる熊谷を
振り返ってる。


「貴方は西田章吾さんですね?
催眠療法協会の一員として
これを報告させて頂きます。」


資格取り消しは間違いない。
活動も表だって出来なくなる。

男はわあわあ
言いながら専務に泣き着いた。


「それだけは!
俺は熊谷に頼まれてやった
事なんです、だから・・!」

「開業費用助けてやるって
言ってノったのはお前だろ?」


禅は悪びれた様子もなくそう
言い嘲笑を後へ流して見せる。

そして今度はキュと顔を顰めて
シアを見た。


「俺を騙したの? 」

「お互い様では?」


彼女の代わりに専務が答えた。
そう、彼女は禅を忘れて
などいなかったんだ。

彼女がオトリを志願して
出来たシナリオだったのだ。


「バカだよ。その男より俺は
君を愛してあげたのに。」

「痛めつけるのがその証か?
お前は異常だよ・・禅。
一度診て貰った方がいい。」

「何を・・! あ、オイッ!」


ハゲ頭の西田が
部屋から逃げ出していった。

振り向きザマ、空かさず
専務は彼のコメカミを取る。


「素人に頼らなくても
私がお手伝いしますよ?
さあ、気を楽に・・。」