「・・ねえ? もう直ぐ誕生日
だけど、何か欲しい物ある?」

「あ・・特には・・。」


やはり、
ショックが大き過ぎたらしい。


俺は"知りたい"と云った彼女
を連れて、恩田さんの許しを
得た上で自宅へ一度戻ったんだ。

トラブルの元になった2つの
映像を見せる前にもう一度
説明したし、念も押しといた。

今のシアにとっては
どちらかと言えばシェジュと
俺との映像よりも、

画面の中で自分が
覚えのない男(俺)と覚えのない
激しいSEXしてる方が
遥かに衝撃的だった様で。

シーグラスに戻る途中の車の
中、彼女はずっと言葉少なだ。


「あの・・。」

「・・なあに?」

「あれって・・本当に
"愛し合ってるトコロ"ですか?
私には"苛められてるトコロ"に
見えたんですけど・・。」


俺の鼻がプクと僅かに膨らんだ
事には気付かれていない。


「君はMなの? 苛められて
あんなHな音を出せるんだ?」

「え、ち、違います・・!」


真っ赤になりながらムキに
なったりして・・可愛い。

正直な所、シアはプチMだ。
何も違わないけど黙っとこ。


「たまたま、あの日はそう
云うメニューだっただけだ。」

「そ・・そうですか・・。」


そう。Sのレパートリーの中
ではあんなの入門編だってば。

助手席で顔を俯けて余計に
小さくなっている彼女の頬を
信号待ちで手を伸ばして擽る。


「最後に映ってた、
キスの"奪い合い"が
その証拠だと思わない・・?」

「・・・・・。」


トドメ刺しちまったか。
隣で噴火寸前だ、見てて楽しい。


「でも・・どうして私、あんな
DVDを持ってたんでしょう?」

「大丈夫・・、その内判るよ。」



シアの記憶は虫食い状態である。
俺は焦りを隠して微笑み、
柔らかなほっぺを指先で摩ってる。

そして会社に戻ってから
待っていた恩田専務に訊ねてみた。


「あのマンションの防犯カメラの
映像って見る事は可能ですか?」


・・普通なら無理だが
あの物件はシーグラスの物だ。