「記憶障害・・?」


此処はシーグラス近くの病院。

シアは恩田さんの診察の後、
緊急の検査を受けた。

脳に一切の異常は見られない。


「考えられるのはそれしか・・
だとしたら、ストレス性、
短期か、長期かはまだ何とも。」


本人はケロっとして
もう紙コップのココアを手に
待合室で座っている。

恩田さんは担当医と話してた、
迎えに行った俺を見上げてる。


「あの・・私と貴方って・・?」


こんな事をどう説明すりゃいい。
俺は溜息をついてから
彼女の隣へとゆっくり落ち着く。


「シア・・? 本当に覚えてない?
俺だよ? ジュードだ。ラフィを
見たろ? 彼はちゃんと覚えてる。」


「そうですよね・・。」


それには彼女も
認めざるを得ない。
ラフィは以外と人見知りする。


「で・・、
どんな関係だったんです?」

「・・毎晩、ベッドであんな事
こんな事、いっぱいシテた仲だ。」


仕方なく真正面をむいたまま
シレッと言うと隣の彼女は

手の、紙コップにシワが寄り
クチをパクパク、プルプル、
顔を真っ赤にしてアウアウ状態だ。


「絶対ウソ・・!」

「・・おヘソ右斜め下の辺りに
小さなほくろが縦に2つある。」

「!」


・・これ以上言うと噴火しそうだ。
咳払いをカマして真剣な眼で。


「でなきゃなぜ、あの恩田さんが
君を此処に連れて来たと思う。
彼は元々、君のカウンセラーだ。」

「異常が・・あったから・・?」

「心配はいらない。
シアには俺達が着いてる・・。」


彼女の肩を抱くと体を強張らせた。
俺はどこまで忘れられたんだ?

恩田さんが言うには、
俺との事が原因で・・、

俺だけ!を、忘れている可能性が
あると言うんだ・・。

あまりに辛い記憶を自ら封印する、
自己防衛みたいなものが
忘れる手段として働いた・・?


「幸い・・仕事に支障はない。
ただ、あの家に1人で
置いておくのはどうかと。」

「なら、俺の家に・・!」


「・・・辛い事になりますよ?
キマリを守って頂けますか・・?」


そう・・確かに辛かった・・。