翌朝・・俺は専務に言われて
シーグラスとのコラボシリーズ、
第二弾製作の為の
会議に顔を出す事になってた。

嫌な予感はしたんだ。
やっぱりそんな魂胆だったか。

ラフィを連れて
事務所の角のソファで専務を
待ってるシアを見つけた。

傍のコート掛けにダウンの
スタジアム・コート。

ペット商品の撮影がロケで
あるんだろう。

俺もそうだけど、あの人も
熊谷禅がどうも
気に食わないらしい。

・・・?

動じてないよう、いつも通り
ポケットに手を入れ
ゆっくりと歩いて来た俺に
シアは会釈程度に頭を下げた。


「ラフィ」

尻尾ふりふり傍に寄ってきた。

ああ、可愛い俺の黒ブチ息子。
ヨシヨシと抱き上げてやる。

そしてポケットから合鍵を出し
ポカンと見ていた
彼女に差し出したんだ。


「合鍵、返しておくよ。」


これを返せばもうこれで
本当に終わりかな・・。

鍵と俺を交互に見ながら
やっとそれをゆっくり受取る。


「・・・うちの?
どうして貴方が家の合鍵を?」

「どうして・・って?」

「前に
あの部屋に住んでらした方?」


らしたかた? カタ?

・・・俺が、方?

そして、不安気な顔でラフィを
見遣ると・・おずおず、
有り得ない質問を俺にぶつけた。


「あの、失礼ですが・・
お名前をお聞きしても?」


ガタガタガタッ・・!

事務所の中の人間が全員
ダンボ耳だったって事が判る。

電卓やらパソコンやらの音が
一斉に止まって此方を見てた。

勿論、驚いて俺の方は
リアクションすらとれず・・
金縛りにあっていた最中で。

我に返ると事務員らも
その一言を待っていた様だ。


「・・・今直ぐ恩田さんを。」