「・・シア?」

私は歩くのを止めた。

いつも彼のペースに
巻き込まれてホントの事が
言えなかったのかもしれない。


「私たぶん・・ジュードさん
のこと、愛していません。」

「・・・・え?」

「だから・・・」


彼を見てる、
だけどボヤけてきた。

一生懸命言葉を絞ろうとする
けれど・・喉と涙腺が熱い。


「だから・・もう、
構わないで・・欲しいんです。」

「・・・・・。」


呆然と凝視していた彼は我に
返るのも早く、真面目顔で。


「OK・・とにかく帰ろう。」



またツカツカと歩き出した。
拍子ぬけしてる私もつい
歩くしかなかった・・。

家に着くと何とも言えない
痛い空気に見舞われた。
彼はずっと何も言ってない。


「・・・・。」


私も無言で二階へ上がった。
お風呂に
お湯をはって浸かりたかった。

鍵をかけなくとも今日はもう
彼も入ってこないだろう。
入浴中に帰るかもしれないし。

ここの部屋は前と違って、
デザイナーズでもお風呂の
壁はスリガラスみたいだった。

その方がリラックスできる。
ゆっくり髪も洗えるし、
ボディケアだってする。


ガタン・・


玄関の音だ・・
どうやら彼は帰ったらしい。

ホッとした様な淋しい様な。
湯船に浸かりながら思うのだ。

あのDVDさえ観なければ・・
今日はいっぱい話したい事が
あったのに。

それに・・こんな事・・
気付く・・いえ、まだ
自分の中じゃ疑ってる段階で。

愛していないなんて
あまりに唐突過ぎる。

だけど

彼が私をセフレと云ったのは
本気の言葉ではないと
それだけは・・解っている。

仮にも坂巻が私を託した男、
それだけは違うと思いたい。

"隠し事はナシ"

もし、まだ私になぜ
何があったのか?と聞くなら
あのDVDの存在を
明らかにしよう・・。

私にとって問題はもう
DVDではないのだから・・。