「放れたのはいいんですけど
ヘタに動くのが怖くて。」


火傷は
耳の上を煙草で焼いた様な痕、
そしてその付近の髪を少し
焼いてしまっていた。

あの時、耳元で聞える恐怖の音
が鳴り止むのを待っていたのだ。

それがゾンビポーズの理由だ。

ホテルの控え室でそっと着物を
脱がせ、着替えさせてから車で
病院に来て処置して貰っている。

医者は

「着物が助けてくれたんだ」

そう云った通り・・襟から肩、
そして袖の部分は穴だらけで
もう少しで肌襦袢までも
焼け熔かすところだったのだ。

奴が所持していた硫酸を
寸での所で掛けるのを
踏み止まったお陰だった。

奴は俺を狙っていた。
逆恨みと云おうか・・。

ボーイとして紛れ込んでいたの
は退会処分させれてたシアの
ファンだった男だったのだ・・。

恩田専務が怒鳴った後、
彼は呆然と立ち竦んでいる所を
警備らに直ぐ取り押えられ
そのまま御用となった。

あのグラスを倒された時には
もう近くまで来ていたらしい。

ホッとしたのも束の間、一瞬に
してボーイの顔つきが豹変した
のを見た彼女は、

"何かする心算だ"

そう直感したのだった。


「どうしてお前は・・、
自己犠牲を何とも思わないンだ!
俺の事なんか庇わなくたって・・」


病院を出ようと歩いてる途中、
やっと落ち着いた俺は
人目構わず、彼女を叱った。

専務と俺との間を歩いてたシアは
悪びれる様子は一切なく、
上を向き、息を大きく吸った。


「ここで止めなきゃ・・」

「「 え? 」」