夢にまで見た、
皆との楽しい時間を過ごした
私は那須さんと別れを惜しみ、

迎えに来た久々に会う
元木マネージャーの運転で
自宅まで送って貰っていた。


朝会った時、顔には露骨に

『ヨリ、戻しちゃったんだ』

って、書いてあったから笑う。


彼も同じ事を感じたのか、
ジュードさんは後から運転席
のシートを軽く一蹴りしてた。

たぶんこれで、
専務の耳には入る事だろう。
咎められる事もないと思うが。


「じゃ、しっかりね? また
ブッチの方に連絡するから。」


車を一緒に降りて別れ際、
彼が小声でそう云った。

私は映画宣伝の為、僅かだが
滞在日数が残っている。
ただしかなりハードな予定で。

でも帰国して良かった。

ずっとシコリになってた
有耶無耶なままの2人の関係。

それが昨日、はっきり結び付
いた間柄だって判ったから・・
ほんわかと嬉しい。

いつもより笑顔になれそうな、
そんな気がした・・が。

ユウウツなのは、生番組が
一本だけ入っている事。

"しっかりね? "も
そう云う意味だった。

湊汐美ちゃんからの紹介だが
実は前から出演は決っていた。

誰から花が届いているだとか、
私から柘植くんにフルだとか、
既に決ってて解ってることだ。

こちらではオオギリのネタで
さえも、ちゃんと打ち合わせ
が出来ているそうだ。

バラエティ番組の裏側は
きっと
知らない方が楽しめると思う。


「ジュードさんと
仲直りしたんですか?」


車で迎えに来た専務が
開口一番、私に訊ねたのだ。

唐突な先制攻撃に思わず
口をぱくぱくしてしまう。


「盛大なお花が局に
届いてるそうですよ・・。」


こればっかりは仕方ない・・

そんな、呆れた風に笑って
私に一枚の紙を手渡して見せた。

彼からは一言も聞いて
なかったからちょっと驚いた。

えっ?

コレ、お花の並びまで
指示しちゃうんですか?

まるで、テレビの外側の人だ。


「観客の人もきっと
一杯いるんですよね・・。」


生番組ほど怖いものはない。
今日も例外ではなかった・・。