彼女がベッドから立ち上がり、
いくつかのシューズ・ケース
位の大きさの箱を出してきた。


「お人形をね? 3つも送って
来て下さったんですよ?」

「お人形・・?」

「ええ。」


丁寧に包みを開けていくシアを
眺めて・・また上の空だ。

・・落ち着こうじゃないか。
たかが・・男の1人や2人や、

その・・薬のコトなんかで
取り乱すな・・! そうとも。

俺はJudeだ・・!

歌って踊れて演じれる、
美貌のジャパニーズ・ロック
アーティストなんだから・・!


「こ、これはっ・・!」

「良く出来てるでしょう?」


彼女が手にしているのは、
"マリ"の吸血鬼コスチューム
のフィギュアじゃないか・・!

俺は箱を思わず手に取った。

"MASA・MASCO"

美少女フィギィアの神様!?
業界NO1の益子正尚!?

キャラクターひとつで
ウン千万の値が着いたって云う
あの、例のカリスマかっ!?


「か・・わいぃ・・・。」


ああ・・! なんて激レアな。

俺は違うポーズのそれを手に
ウットリしてしまう・・クソ、
何てイイ仕事をしやがるんだ!


「き、気に入ったんですか?」

「有難う。」


チャッチャッと箱へ入れた。
傷が付いたら価値がない。


「すっごく、大事にするから。」

「えっ、3体ともっ?」

「・・じゃ、一個返す。
ねえ? あの同じ箱は?」

「あ! あれは絶対ダメですっ、
記念すべき初出演の、ああっ!」


俺はJudeで・・!

歌って踊れて演じれる、
美貌のJロックアーティストで・・

隠れヲタクだ。


「ほらっ、やっぱり!」


シアの制止を振り切り、
棚にあった禁断の箱を開ける。

おおっ・・なんと目映い・・

シア・マニアなら絶対、
"男の夢"を叶えると思ったんだ。
多分俺だってコレを造ったろう。


「酷いですよ、それだけは
持って行かないで~・・。」

「う・・ん? あぁ・・大事に
するよぅ・・。」←既に別世界。


あの映画のワンシーン、
白いYシャツ姿の"あさぎ"を
俺がゲットしてウットリしてたら。