線香より煙草がいいだろ?

最初に坂巻と飲んだ酒を
持って俺は彼の墓を訪ねた。

墓地の近くの小さな花屋で
適当な花も買った。

此処には最初、
シアと2人で
一度来ただけだったが
水道を目印に覚えいる。

確か・・もう、そこだ。


「ユリ・・?」


小さな白いユリが沢山
供えられていた。

誰か先に来たんだろう。
お線香も半分は燃えている。

命日でもないのに・・・?


( まさか・・!? )


彼が愛飲していた酒の
ミニボトル、
ツヤピカに磨かれた墓石・・。

俺は咄嗟に下に降りて周りを
見渡した。車の陰形もない。

今日戻っていても
何も不思議ではないのだ。


「なんだよ、アンタ。
俺より先に会うなんて・・
ズルイんじゃない・・・?」


同伴ではなかったけれど、
来てやったんだから
文句はないよな?

あいつはどうだった?
もう直ぐ19だぜ?
キレイになっただろう?

女の成長は早いよ・・

アンタから彼女を預かって
まだ1年も経ってないのに。

あのシアが・・
こーんな、大それたコトに
なるなんて・・想像したかい?

アンタが生きてりゃ・・ふふ。
一緒に酒呑みながら映画鑑賞と
シャレこんだものを。


「もう一本、
開けといてやるけど、あんまり
飲み過ぎるんじゃないよ・・?」


"じゃあ、また"

俺は手を振って
物言わぬヤツに別れを告げた。