俺の元に招待券が一枚届いた。
プレミア上映のものだ。

事務所からなのか、
彼女の気持ちから
だったのかは知らない。

少し遅れて日本にやって来た
映画の中の彼女は・・

とてもコケテッシュで
キュートな少女ヴァンパイア
を独特の雰囲気で演じていた。

黒いラフなショートボブ、
ビスクドールを思わせる様な
オメメぱっちりメイク。

指先の柔らかな女らしい動き、
かと思えば子供みたいに
ダダを捏ねる仕草だとか・・

いちいち笑いが沸き起こった。

俺は・・こんな彼女も
知らなかったんだな。


(ああ、何も知らないまま
手放しちまったんだ・・。)


一番前で・・誰にも知られず
俺だけが泣きそうに笑った。

明後日、シアはこの映画の
プロモーションで一度戻る。

他のキャストと公開初日、
舞台挨拶をするそうだ。

ファンクラブのサイトの
お知らせにそう書いてあった。

俺は最後に彼女からの
短すぎるメールを一通貰った
だけで、その後も
連絡は取っていない。

彼女のお陰か・・
仕事の数も戻って来て俺は
また忙しい日々を過ごしてる。

お前の姿はブラウン管を
通して見る事になりそうだ。

今日しか丸一日の休みが
取れなかったから・・

そうだ、久し振りに坂巻さん、
アンタにも報告がてら美味い
酒を持って行かなくちゃな。

"彼女同伴"って云ってたのは

ふふ・・。

もう忘れてくれないか?