「・・ドイツでは
危ない橋渡らせちゃって。」
「役には立てなかったけど、
スリル満点でタマにはいいね。」
「でも良かったじゃん、
ちゃんと見つかってさ・・。」
俺はメンバーの2人とスノボを
しに長野まで来ていた。
またツアーに入ったら
来れなくなる。滑り収めだな。
「で・・シアちゃんとは?」
上級者コースに辿り着くと
横並びになってマスクを被った。
俺はオドケて肩を竦めて見せる。
「彼女? ふふ。もう、
飛んで行っちゃったんでね。」
巣立ったって事だ。
俺の役目はもう終ったんだ。
アメリカでも端役である彼女が
話題になっているらしい。
俺達は
一切の連絡を絶たれていた。
那須も柘植もサクヤでさえもだ。
事務所は今、必死なんだろう。
会長も今頃はイイ買い物をしたと
ほくそ笑んでるんじゃない?
こんな弱小プロダクションから
ハリウッド女優なんてさ。
流石は大企業のドン、
目利きはハンパじゃなかった。
「降ってきたな・・やばい。」
滑るだけ滑って
チラついてきた雪に
ロッジで休憩を取ろうと戻った。
「えっ・・?」
「「・・・? 」」
ロッジの入り口で誰かが俺を
呼んだ声に1人振り向いていた。
マスク被ってりゃ誰だか
解んないだろ? 気のせいか。
テレビの注意報通り
雪は降ったり止んだり、
誰かがテレビのチャンネルを
変えたのを切っ掛けに三人とも
腰を上げて外に出て行った。
『本日、東日本映画祭が催され、
ゲスト女優だったSiaさんが
壇上で倒れると云うハプニングが・・』


