＋ ｍｉｓｓｉｎｇ-ｌｉｎｋ ＋

何が狂ってこうなったのか。

私には考える与力さえ
残っておらず、
仕事復帰後も言われるまま
日々過ごしている空虚な毎日。

"疲れましたか?"

仕事で取材を受けた帰り、
恩田専務は私にそう訊ねた。

"いいえ"

気を使って貰いたくない・・

そう思えば思うほど、私は
おかしくなっていった。

食べなくては痩せてしまう、
眠らなくては肌に出てしまう。

笑わなくては
また心配を掛けてしまう・・。


「シアちゃん、
調子悪いんじゃない・・?」


シーグラス新作のスチール撮影、
ファインダーを覗く男が言った。

"いいえ"

そう首を振れば、現場にいた
衣装さんとメイクさんが
顔を見合わせている。

それを見て
つい反射的に付け足していた。

恩田さんに何か言われては困る。


「夕べ、よく眠れなかったから」


こうして私は
どんどん嘘つきになっていった。

そんなに悪い事じゃない、
嘘も方便って言葉がある位だと
自分に言い訳しながら・・。


「お昼はカルボナーラでも
食べましょうか?お好きでしょ?」



口に物を
入れるのが苦痛になっていた。

食事は
今の私にとって一番辛い時間。

それでも恩田さんは私が
痩せたことに気が付いていて

一緒に食事をする時は必ず
栄養価が少しでも
高いものを食べさそうとした。



「ええ・・。そうしましょうか。」


コントロールが利かない危機感、
それでも私の愚行は止まらなかった。