・・・ハリウッド女優?


誰のことかとも思う。
たった脇役で一本出ただけだ。

"13番街の住人"が向こうで
ロードショウ公開されていた。

途端に取材の申し込みの
依頼が増えたとかで会長から

"いつまであんな所に
住まわせて置くつもりだ"

と、専務が叱られたとか?

そんな見栄みたいなもの、
どうだっていい・・。

会長の気持ちを代弁する
恩田さんの言う事も解る。

折角、イメージ・ガールに
返り咲いたというのに恋の噂
で台無しにしちゃいけない。

つまり、事務所としてはもう
Judeさんに関わらせたくない。

・・そう云う事だろう。

電話で連絡が入った翌日・・
私は三度目の引越しを
させられていたのだ。

せめてもう少し、
体調が良くなってから
でも良かったのでないか。

ただでさえ・・弱ってる。

商品でしかないのかと
少し孤独を感じてしまう。

ぶっちゃける所、
私はかなりの貧乏性で
高級さなどより、質素でも
周辺が静かで平和なら
何所でも良いのに・・。

閑静な場所って云うのは
合ってる。

ただ、その物件はシーグラス
が独自に建てたマンションで、
一般には貸し出さないという
完成したばかりの新築物件だ。

ホテルに一日泊まらされて、
その搬入し終わった部屋に
案内された時は・・、

開いた口が塞がらなかった。


「シアさん?
バッグ落ちてますよ?」

「あ・・。」


外も中も、プロヴァンス風。
流行なのか・・な?

テラコッタのレンガが暖かい。
なのに設備は最先端ときてる。

本当なら感謝しなくちゃ
いけないのに
事務所に管理されている・・
正直、先立つそんな想い。

贅沢な事だが、そう実感して
息苦しささえ覚えてしまう。

大事にされているのだ。

誰にも
文句など云っちゃいけない。


独り、ラフィと取り残された
やたらと広い部屋。

皆と暮らした・・あの時が
今になってこんなにも恋しい。

ドアに背もたれたまま、

部屋の前に広がる
薄いオレンジ色のレンガの上・・
涙が一粒、ポタリと落ちて浸みた。