______ 少しづつ、

何か変わった。


結城史亜は
本当に静かな女だった。
それでいて、
存在はちゃんとそこにある。

まるで女版の"坂巻孝介"だ。

今は坂巻から預かっている為、
同じ屋根の下で住んでいるが

フツウ、
プライベートも付き人と
一緒なんて
ウザくてやってらんない。

って云うか
俺には有り得ない事である。


ところが。


鬱陶しいどころか実に
快適になってた。

かゆい所に手が届くって感じ。


「いいよナァ、シアちゃん。」


ある日のテレビ収録の日、
メンバーの1人が
シアを遠目に見て云った。


「は?」


1人が切り出すと
全員が口を開き出す。

あんな、
笑わない女のどこがいい?


「笑うと可愛いっすよね。」

「笑う??」


「"おっちゃんと
草むら行こうか"って云ったら
照れて逃げられちった。」

「アア!? なんだそりゃ!?」


「彼女、自販機の一番上に手が
届かないんすよ。つい後ろから
"高い高い♪"って、体を上げて
やったらモ、スゲエ笑ってた。」

「え、スゲエの!?? 
そんなに笑うの!??」


「「「 笑うよねぇ? 」」」



ショックだ。
俺だけ除け者な気分だ。

・・何だよ!

俺の知らない所で
皆、何してくれてんだ!


「「「 Judeさんは女の子に
どっかで威嚇してるからー。」」」



・・と、
口を揃えて云われてしまった。

そうか、俺の
コミュニケーション不足か。

いや、待て。アイツらは良い。

相手はたかが自分の付き人だ。
まんまと乗せられる所だった。


メンバーに言われて
気がついた事は
それだけじゃない。

シアに細かく
世話を焼かれる俺を
羨ましそうに遠めに眺める
周りの男達の視線。

化粧でもさせればきっと
一盛ナンボのアイドルらより、
芸能人らしく
垢抜けて見えるだろう。


小さくても・・確かに綺麗だし
付き人としては
満点をやってもいい。


けど・・
一度見てみたいもんだ。

シアがスゲエ笑った顔をさ。