「・・風邪、移っちゃうよ?」

「だーいじょうぶだって!
大体、シアちゃん油断し・・
キャー! なにそのパジャマ!!
メチャカワイイじゃんっ!!」


声が・・! 頭に響く。

アメリカン・ショートヘア柄の
着ぐるみパジャマ姿を
汐ちゃんに見られてしまった。

これが以外と暖かい。


「にゃーッ!!尻尾まであるっ!
どこでお買い上げした?」

「え・・これは
お、オーダーメイド・・。」


スタッフが作ってくれたモノだ。

またオーダーメイドなどと・・

誰が、この類のパジャマを
注文してまで作ると云うのか。

自分のおバカ加減が
チョト、ハズカシしい・・。

実は帰りの飛行機から降りて
風邪をひいたらしくて熱が出た。

恩田さんが病院に連れてってくれ、
暫く安静って云われてる。

ここの所
体力低下が著しい様に思う。

ずっと・・忙しかったから
休養を頂いていたのだ。


「あっ。つい興奮した。ごめん。」


やっと
声の大きさに気付いてくれた。

彼女は夜のラジオ番組の前に
寄ってくれて今、
キッチンでおかゆを作っている。

カーディガンを着て
後から声を掛けた。



「あのね、汐ちゃんにお願いが
あるんだけど・・いい?」

「んー、なに?」

「アルファベットで表札・・
書いて欲しいんだ・・。」

「・・・は? あ、うん・・。」



そしてお土産と一緒に
今日で切り替わる新しい
携帯番号とメアドも書いて渡した。

彼女も女の子。
事情は直ぐ解ったらしい。

YAMASHITAって、
適当に考えてくれたのを
黒マジックのカワイイ字で。



「じゃ、これ貼ってくる。」

「ホント? ごめんね。」


鍵も・・もう、
まるっと変えてある。

恩田さんにドイツから
事務所に連絡して貰ってたから。

そして彼は
賞を取ったお祝いと称して・・

私が欲しがってた
フランスの絵本に出てくる
ウサギの携帯を
プレゼントしてくれたのだ。

たぶん・・専務は、
気を利かせてくれたんだと思う。