「彼女(シェジュ)の
映画は昨日だったってよ?」


休憩していたカフェで
スタッフが云っていた。

ジャーナリスト枠で
彼女の映画を観た人によると、

千人は入る場内から
映画が始まって10分も
経たないうちに半数の
海外のジャーナリストが
次から次へと
出て行ってしまったそうだ。


「海外のメディアは
"お世辞"も知らないからね。」

「審査員も皆、
大あくびだったって。」


それでも一応のコンペ(金賞)に
ノミネートはされた筈・・。
シビアな現実である。

でも・・彼女、
なんで今日も来てたの?


「ウチはノーマークだ。
皆、気楽~に、してろ?」


監督が暢気に
云うからつい皆笑ってしまった。

その言葉のお陰で
急にリラックス出来て

時間があるから会場の隣にある
ショッピングアーケードに
行こうかって話しをしてる最中。

カフェコーナーの前をぞろぞろと
観客が出てきていた。

「ソウル・ブルー」の
上映も今終ったらしい・・。


「「「 !? 」」」


突然、拍手が鳴り出したのだ。

振り返ると、
首からカードを下げた
人達からの拍手である。

皆、
こちらの私達を見てニコニコ、
笑って拍手を送っている・・?

呆然としていると、
監督がいきなり
席を立って近づいてきた数人と
握手をし、肩を叩き合っている。

そして訳の解らぬまま、
紹介されて
私達も慌てて席を立った。


「シイ、写真を一緒にって。
ああ、男は遠慮しとくってさ。」

「はぁ・・。」


その人達に
早口で何か云われてハグされた。

写真と云ってもマイカメラで、
後で聞いた話、彼らは
審査員の映画監督だったのだ。


「簡単なインタビューだけ
受けてほしいそうだ。」


急遽、なぜ決まったのか。
私たちは三人とも
顔を見合わせるばかり。