モヤモヤを消化できないまま
とうとうスタッフらと共に
飛行機に乗っていた。


「ホテルに着いたら
リッチなディナーでも
皆で楽しみましょう。」

「長い時間ですね・・。」


今回、ラフィは預かって貰った。
恩田さんにこれ以上、
気を使わせたくなかったから。

向こうで・・
映画の上映日が違うらしいけど
シェジュと会うことは
覚悟しておいた方がいい。

何があっても・・
毅然としていなくては。

向こうに夕方着いて
合流した監督や他の2人と
一日目はホテルでゆっくり、

二日目は映画の宣伝をしてくれる
配給会社の人達とお会いして

後はもう分刻みの取材。
映画祭までの間、
取材を多数
受けなければならなかった。

いよいよ当日。

ホテルに
スポンサーのひとつ、
某有名な車のメーカーから
送迎用のリムジンが迎えに来た。

この日の為のタキシード、私は
ミニのドレスで映画祭会場へ。


「ど、どうしよう、
凄いことになってますよ・・!?」


他の2人も海外の映画祭は初めて、
監督だけが笑って見ていた。

車を降り・・
皆とレッド・カーペットを踏んだ。

足が震えてカクカクしてる。
凄い報道陣の数に圧倒された。

フラッシュの雨あられの中で
キリキリと痛む胃。
笑顔も強張ってしまう。

到着して軽いお披露目の後
階段を上りフロアに入ると
何箇所か人だかりが出来ていた。

最近はカンヌ以外でも
売り出し中のセクシー系、
新人女優の撮影をやってるとか。


「・・・。」

「あら、お元気?」


その人だかりから出てきたのは
・・・今、最も会いたくない人。

マスコミの中には2人の間のコト
を知っている人もいる。
途端に増える、閃光の数。


「シェジュさん、こんにちわ。」


ここはムリにでも笑っておいた。
すると向こうも余裕の微笑返し。


「さ、行こうか。」


他の2人が気を使って
背中や肩を庇う様にして
正規の、撮影場所に誘ってくれた。


「シィ! シィ!」

「シーア!」


こっちを向いてと声が掛かる。
カメラのフラッシュが・・辛い。