じりりりりりり・・!



何とか___ 間に合った。


鳴り渡る非常ベルに
警備の人達が
背後をウロウロしていたが
何とか煙草は渡せた。


「・・はい、
本番入りまーす!」


大きな掛け声に
出演者全員が急ぎ立ち上がる。

公開収録だから、
女の子達の黄色い声がスゴイ。

ジュードの白シャツの後姿が
ゆっくり歩いて行くのを
収録現場の脇で立ったまま、
ただぼんやり眺めてた。


旬な、
いい男を集めたと云っても
絵に描いたような
"美青年"である
"Jude"は抜きん出ている。


そして強烈なキャラクターで
彼は人気を不動のものにした。


今の雇い主が
どれだけ騒がれようと
私にはどうでもよく、
他人事ではあるが。



「あっ・・。」



後ろに下がると
誰かとぶつかった。
知らない男の人が
軽く手を上げ、

"いいよ、いいよ"

そんな風に合図したので
それに頭を下げる。


こういった現場は
慣れていない。

坂巻は殆ど
テレビに出ないから。

ジュードが歌う時には・・
彼が来る。

どうせ坂巻は
話掛けてなどくれない。
辛い時間になるだろう。

あと、30日。
少し我慢すればまた戻れる。

一日経てばまた一週間、
サクヤさんの家だけど・・
いずれ戻れる。

三人目は誰なんだろう。
でもそれが終わったら・・
戻れるんだ。


"何でもする"その気持ちに
嘘偽りはないけれど
正直に、本当は辛い。

彼の本意が・・解らないから。