聞けば契約が済んだのは
三日前らしい。

シアとは密に連絡を
取り合っている様だ。

二人目である俺にも、
彼女が同じ事を
したと解ってる。

俺には・・
何も聞かないのだろうか?


「俺はシアがシアであれば、
それでいいと思ってるよ。」



心を読まれた。
俺は今、
どんな顔をしていたのか?

彼はフ・・、と目を反らして
菩薩の様な笑みを浮かべた。

サクヤは・・
俺なんかより
ずっとオトナだった。

実際、俺より年上だが・・
デビューも早かったし、
この世界では
相当揉まれてきてる。



「あんな子、初めてなんだ。」



そう静かに呟いた彼は、
温厚な人柄で
何処へ行っても
ムードメーカーだ。

諍いを避ける為に出来るだけ
波風立てず、
平和的、自然な形で
彼女を救おうししてた。

その落ち着きというか
サトリ的なものがまだ
俺にはなく、
羨ましく思う時さえある。



「じゃ、ライバルだね。」

「ええー!? 嘘ぉ??」



ちょっと云ってみた意地悪。

そんな風に
おどけて見せる辺り、
彼も・・
望みは薄いと
感じている様にも思える。

彼女は
あの男の物でいたいのだ。
そして坂巻も実は
手放したくないのだ。

それは金づるとしてなのか、
歪んだ愛情なのか、

それは俺たちの知る所では
なかったが・・。



「実は俺も出来なかった。」

「そうなの?」

「うん、彼女の首の傷・・。」

「ああ、見ちゃったんだ?」

「何か聞いた?」



彼は小さく
首を振り肩を竦めた。
スナックの塩を両手で叩き
ながら、口を重たげに開く。



「あの傷の事も聞かないで
やってよ。俺、前に
それで泣かせちゃったから。」


「・・・OK」



サクヤが・・
気のせいだろうか、
次の言葉を言おうとして口を噤んで
しまったかに見えた。


シアは泣いて、
彼に何を言ったのか。
気にはなる・・。