「体当たりの演技もいいけど、
程々にしてくれないと心配だ。」


「ドイツ映画祭への出品の話で
何だか皆力んでるみたいです。」

「・・・そうなの?」


話として出品部門は、
公式部門の特別招待作品。

まだ、"そう云う話がある"って
段階。だってまだ出来てないし。

でも、
もし決まったら凄い事だ・・。
俺も、うかうかしてられない。


「映画の後は?」

「決まってないんですって・・
この映画次第・・ですか。」


そうか、会長も
考えあぐねているんだろう。
勝手なモンだがそれも仕方ない。

シアも良く解っている。
頭の悪い子じゃないから。


「ただ・・映画やドラマの話は
あるんですけど・・監督がね?」


"つまらない作品に手を出すな"


監督は彼女に映画で勝負しろと
云ったらしい。


「駄作なんかに出たら
もう使わないぞ、・・って。」


確かに・・俺もそう思う。

金の為に作品を選ばず、
廃れていった役者は結構いる。

女性は特にそうかもしれない。
"最終兵器"があるから・・ね。


「・・賭けてるんだね」

「ふふ、そんなオーバーな」


湯船の中、腰を引き寄せると
キュッと体を縮めて笑う。

嘘だ・・引退も考えてたクセに。

一言も言わないけど、
そんな事考えてる事ぐらい
もう解ってるンだから・・。


「ところで・・
ベッド・シーンはいつ撮るの?」


咄嗟に立ち上がろうとする動き。

ぐっ!と腕を回したまま
後ろから顔を覗かせる。


「口元・・・、
ヒクヒクしてるね・・・。」


片手でその口元を軽く
ムニュと摘んだら
シアの体が固ぁく、なってる。



「そこ、詳しく聞こうじゃない」

「ヒャイ・・」



NGは何回出したのか
どっちが出したのか・・。

時間にして
ナン・プン・ぐらいッ!

腕枕されてたのか・・!?