・・クランクアップも
近づいて来たある晩、

俺はたまたまその夜、
泊まりに来ていて、
彼女が恩田専務に付き添われて
部屋に帰って来たんだ。

手に怪我をしたらしい。

兄と主人公との
部屋での乱闘シーン

カイトに馬乗りになった栗田が
止めに入ったシアを振り払った。

弾き飛ばされて
小道具の花瓶を割ってしまい、
彼女が演技を続けたのでそのまま
カメラを回して撮ったそうだ。

OKの声が掛かってから本人も
気付いたと云うから呆れる。



「・・おのれ、栗田ァ!」

「少し切っただけですって・・。
(そんなメラメラ背負わなくても)」

「顔じゃなくて良かったですよ。
じゃ、シアさん。私はこれで。」


「お疲れさまでした・・・・・」



振り返った彼女がソロリ、
二階ヘ上がろうとするので
右手を掴んで引き戻した。


「今、何考えてるか当てようか?」

「だったら・・
そっとしといてあげようなんて」

「思う訳ないじゃない・・。俺、
優しいからね・・さ、行こうか。」


その手じゃ、服を脱いで
お風呂に入るのも大変でしょ?

やや抵抗の力が篭る肩を誘い
天国(?)への階段を上るのであった。


「あ・・これ・・!」

「え?」


服を脱がせて俺が見たものは。
あちこちに着いている青アザだ。

ローチェストとぶつかった
と云ってた背中は特に酷かった。


「ぬぬぬぬ、栗田ァ!」

「そんなにヒドイ・・の?」


あんまり背中が可哀そうだから、
俺も一緒に入ってあげた。

直接、浴槽に当たったら
痛いんじゃないかと思って。



「何か別のものがアタる・・」

「気にしない、気にしない、
ホラさっさともたれて浸かって」


彼女は左手を不自然に上げて
お湯が掛からないようにしてた。

もう直ぐアジアツアーに出るから
また会えなくなっちゃうんだ。
イチャイチャするのも今のウチ。


「サクヤさんも一緒でしょ?」

「そう、焼肉で釣ったんだ。」


坂巻の後を今回、彼に頼んでた。
実はシアのコトもくれぐれ~と、
恩田さんや那須に頼んである。