_____ 二週間後。


「・・・監督はさっき、
なんて云ってたんですか?」

「ん・・? ふふ、
"まだハラませるなよ"って。」

「エッ・・。」


運転中の彼が
チラリと此方を見てサングラス
の下の目尻を下げて笑う。

二週間ぶりに東京に戻って来た。

空港にジュードさんが迎えに
来てくれてたのだが、
監督と何か内緒話をしていた。


「怒ってませんか・・?」

「ちょっとね」


ずーっと、
携帯切ってたの忘れてて・・
途中から一緒に居た専務の
携帯から連絡を貰ったのだ。


「薄情な女だよ」


呆れた様に云い、助手席の私の
頭をグイーっと片手で遠ざける。


「"何でもするから
許して下さい"って云え。」


またそうやってSっ気を出す。

そんな事を復唱したが最後、
本当に
ナニをさせられるか怖ろしい。


「ごめんなさい」

「許さない」

「許して下さい」

「何でもする?」

「・・・。」


思わず、カリカリとこめかみを
掻いて彼の澄ました横顔を見る。


「何させるか聞いていいです?」

「ご主人様と呼んで貰う。」



・・・・凄く、嫌な予感。

信号待ちで止まった、
この辺りならもう歩いて帰れる。

ナニゲにドアのロックに手を
掛けたがチャイルドロック?が
掛かっていて開かなかった。

彼の、勝ち誇ったかの
不敵な笑みを見てしまう。



「散々心配かけて、ほっといて
出来ないとは云わないよねぇ?」

「あ・・・。」


そしてとうとう、
私のマンションの敷地内へと
車は到着したのだった。