片眉を黙って吊り上げた
俺を見てサクヤは照れた様に
"ハハッ"と声を上げて笑う。



「また、借りるんだってね。」

「うん。少しづつ、
彼女をクドいてんだ。」

「本気なんだ・・?」



俺はこの男が嫌いじゃない。

今の彼を見る限り、
とても坂巻色の
あのアクの強い同じバンドで
やっていたとは思わない。

共通点があるとすれば
胸元が開きすぎた
シャツぐらいだ。

悠長過ぎるんじゃないのか?

そう思えるが
サクヤは良く解っている。

俺が逆の立場なら
借りたと解った時点で
殴ってるかもしれないけど。

だけどそこは、
人の気持ちがある事だ。

シアは好きで
ヤツの所に居るんだから。



「無理やり切り離して連れて
来てもどうせ戻っちゃうしね。
それもショックでしょ?」


ゆっくり隣に座り
スナック菓子を何気に
俺に薦めるが
要らないと首を振った。



「まずはさ、自身で断ち切ら
ないとね。彼女の気持ちから
変えてやらなきゃ・・。」

「サクちゃん・・。」


「少し欝な所があるけど
凄くイイ子だよ。
俺ね、何でも話せちゃうし。」



ナイーブな者同士、
話が合うのか。

俺はシアが普通に会話して
いる所などまだ見てない。

何より、
女には特に無口なこの男に
何でも話させるとは驚いた。


「酷いよね。人の気持ちを
利用してさ。もういつまでも
置いとけないよ・・。」


浅黒い肌、優しい瞳を持つ、
元祖ビジュアル系の美しい顔。

少年の様な少し甘えた声。
珍しく尖がった口が彼の純粋な
心情を表してる。