前室に入った途端、
突然の声に俺たちは振り返る。

ああ、そうだ。忘れてた。
"お気に入り"なんだっけ?


「サクヤさん。」


「どーしたのよ、また派遣?」

「シア、煙草買ってきて。」




俺は邪魔するかに
彼女に小銭を渡す。

サクヤは俺を
きょとんとした顔で見てた。



「いくらだったの?」

「エ?」

「彼女さ。」



俺は思わず隣で耳打ちして
きた彼の肩をガッシと掴む。

なんで最初に
気付かなかったんだろ?



「サクちゃん、もしかして
彼女を最初に借りた・・?」

「うん、一週間ね。」



平然と・・この男は。
怒るに怒れない、この呑気さ。



「何で抱かなかったの?」

「聞いたのぉ? 
うーん・・、何でだろう?」



どこか天然でイライラする。

リハーサル前だと言うのに、
スナック菓子を子供みたいに
ポリポリと首を捻ってる。



「たぶん・・、純粋スギてさ。
手が出せなかったと言うか。」



ピュアだって?

裸でベッドに
紛れ込んでる女が??