私は ___

玄関先に突っ立ったまま、
持っていたバッグを思わず
ボトリと落としてた。

家具は
勿論もう入れてくれてある。

なのに何でこんなに
スペースが余っているんですか?


「今日は安静にお願いしますよ?
じゃ、私はこれで。」


「あっ」


・・ラフィを私に着き付け、
逃げる様にして恩田さんは帰った。

角部屋で
何処かの喫茶店みたいに明るい。

唖然としているとどこからか
鼻歌が聞こえてハッとなる。

お風呂は前と同じ二階・・。


ガビーン。


バスのお湯を捻っている
ジュードさんが・・

二階に上がって来た私に
手を振っているではないか。



「何で浴室が
ガラス張りなんですか・・。」

「2人で入れそうだね♪」

「・・・。」


とは云うが、1人用にしては
少し大きいと云うだけである。

それより部屋の広さだ。

聞けば下は16、上は14帖ある?
たった1人住むのに・・?

前より2帖ずつ広い。


「馬鹿だなー、ラフィが
大きくなった事を考えてみな?」

「あっ・・そか、そうですね。」


凄いなあ、そんな先の事まで・・。
また会長に電話しなきゃいけない。

恩田さんもそんなに
慌てて帰らなくても・・
お礼も云えなかった。


「ところでさあ・・?」


お風呂場から出てきた彼が
云い難そうに私を見ていた。

ローベッドに座らせ、
小さな溜息を漏らしてから・・。


「本当は何で戻っちゃったの?」


警察には忘れ物を
取りに行ったと云っておいた。

そんな嘘が彼に通用する筈もない。
何を聞かれても・・嘘は言えない。



「答えなくちゃいけませんか?」

「・・俺に隠し事するつもり?」



思わずフイと横に視線を流す。
彼の瞳に覗き込まれるのが辛い。


「あ・・!」