「新人が勝手に載せたと?
謝罪広告の掲載? 
バカいいなさんな。
首を洗ってお待ちなさいよ。」


カチャ!


携帯を乱暴に折り畳み、
会長は今大変ご立腹である。

口調はとても落ち着いたもの
だが、その顔はもう・・。



「裏も取らせずに書かせるとは
言語道断・・! 恥を知らんの!」



専務と二人、会長宅に呼ばれ
私はこれでもかって位、
質のよいイタリア製のソファで
小さく、小さく、なっていた。

本当にこんな事をヤケになって
あの人が言ったのだろうか?

記事の内容は酷いもので、
中学時代から
親の留守中に色んな男の出入り
が激しくて、高校に行っても
そのクセが抜けなくて
夜遊びしない日はなかったとか。

こっちが恥かしくなる。

家が焼けてから1年、1人、
アパート暮らしをさせたのは
あの人だし、高校受験で遊ぶ
暇もなかった。

成績は悪くはなかったが、
入院で勉強が遅れていたから。

その高校は地方でも
規律の厳しい全寮制の学校だ。

そこへ入っていた事すら覚えて
いないとは。

アルバイトも禁止、夜出歩ける
訳がないしトンでもなく田舎だ。

出歩いたら最後、街灯すらない
野原で迷子になってしまう。

そんなのアパートの大家さんか
高校の先生に聞いて貰えば解る。



「如何がなさいます?」

「うむ。」



美人秘書に無言で"グッ"と、
親指を逆さにして見せる。

秘書は何も云わず、
黙って深く腰を折り応接室から
出て行ってしまった。


それって・・
何かの合図だったんですか??